過払い金返還請求とは
過払い金返還請求とは,貸金業者に返済しすぎたお金を返してもらうことをいいます。
「返済のし過ぎなんてありえない。」と思う方が多いのではないかと思いますが,実際には多くのお金を取り返すことが出来る場合も少なくないのです。
過払い金が発生するシクミ
法律上とってもよい利息は,
- 借金が100万円以上の場合は,15%以下
- 借金が10万円以上100万円未満の場合は,18%以下
- 借金が10万円未満の場合は,20%以下
とされています。
しかし,多くの消費者金融やクレジットカード会社が,平成22年ころまで,このような法律上の利息の制限を無視して,お金を貸し続けてきました。
そのため,多くのケースで過払い金が発生するのです。
具体的に過払い金が発生する可能性があるのは以下のケースです。
- 平成22年以前に借入を開始した借金を完済した場合
- 払い過ぎた利息は,元本に充当され,その後の取引に引き継がれるため,完済時の利息が法律の制限内であったとしても,借入の開始時期が平成22年以前であれば過払い金が発生する可能性が高いです。
- 完済していなくても,借入の開始時期が平成22年以前で,取引期間が7年程度以上ある場合
- 払い過ぎた利息が元本に充当され,その後の取引に引き継がれることから,平成22年以前に借入した借金の取引期間が長くなり,払い過ぎた利息が元本を上回った時点で過払い金が発生していることになります。
こちらでも過払い金返還請求についてはご説明しておりますが,実際にご相談いただいた際には皆様の状況について詳細に把握したうえでしっかりとご説明をさせていただきます。ご納得いただいてからどうするかをお考えいただけますので,まずはご予約ください。
書類が残っていないという場合でも,業者から取引履歴を取り寄せることで請求を行うことができます。当法人が取引履歴を取り寄せることもできますので,請求やその準備にあたってのご負担を気にすることなくご相談いただけるかと思います。
まだ完済していない場合でも過払い金が発生していることはありえますが,その場合直接お会いする必要があります。当事務所は名古屋駅からとても近いところにありますし,名古屋には他にも事務所がありますのでお気軽にご来所いただけます。
なぜ過払い金が発生するのか
1 過払い金の発生する理由1-グレーゾーン金利の存在
過払い金が発生する条件は、利息制限法で定められた利率を越えた利息を支払っていたことがある場合です。
まず、利息制限法とは、お金を貸す際に守る必要のある法律です。
貸す金額に応じて、年利15~20%の範囲内と定められています。
改正貸金業法が完全施行されるまでの出資法による、上限金利は、29.2%とされていました。
29.2%を超えた利率の場合、刑事罰の対象となります。
つまり、利息制限法を越えた利率でお金を貸しても、刑事罰に課されません。
貸金業法では、17条書面や18条書面と呼ばれる書面を備えおくことで、利息制限法を超える利息をとっても、みなし弁済といって有効な返済になるという解釈を前提に貸金業者が貸付を行っていました。
みなし弁済が有効であれば、利息制限法の上限を超える20~29.2%の利息も貸金業者が有効にもらえることになります。
そこで、多くの貸金業者が、利息制限法と出資法の上限金利の間の金利である(15)20~29.2%の利息で貸付を行っていました。
この利息制限法と出資法の間の金利をグレーゾーン金利と呼び、グレーゾーン金利で、お金を借りている場合に、過払金は発生します。
2 平成18年判決により、みなし弁済が否定されて過払い金が広く認められるようになった
最高裁平成18年1月18日判決は、今までみなし弁済として利息制限法を超えても有効な返済になると考えられていたものについて、期限の利益喪失条項が入っていると任意の弁済とはいえない等の理由から、みなし弁済を否定しました。
ほとんどの貸金業者との契約には、期限の利益喪失条項(支払が遅れたら一括で払わなくてはならないという条項)が入っていますから、ほとんどの貸金業者でみなし弁済が認められず、過払い金が発生するようになったのです。
3 過払い金の対象
具体的には、平成20年頃より前に、キャッシングで借入れを行っている場合は、過払い金が発生している可能性があります。
なお、現在は改正賃金法が改正されているため、平成22年以降の借り入れに関しては、過払い金は発生しません。
ショッピングの1回の支払い、リボ払い、車やバイクのローン等は、利率が低いため、過払い金は発生しません。
また、貸金業者の中には、利息制限法内の利率で貸金をしている業者もあるため、すべての業者が該当するわけではありません。
例えば、銀行や信用金庫からの借入れは、利息制限法内の利率になっています。
また、過払い金の請求には時効があり、時効にかかると請求することができなくなります。
4 過払い金の相談
過払い金は、お金を高い金利で借り、実際には支払う必要のなかったにもかかわらず、支払っていたお金です。
もし過払い金が回収できれば、今もある借入れの返済に充てることもできますし、今借入れがない方であれば、実際に手元にお金が戻ってきます。
いつごろ借りたか、いつ完済したか覚えていない場合でも、借入れ先から取引履歴を開示すれば、確認できます。
過払い金について、請求をお考えの方や、自分は該当するのかと思われている方は、当法人へご相談ください。
愛知県内には、名古屋にも事務所がありますので、お気軽にお問い合わせください。
過払い金があるのに取り戻すことができなくなる場合
1 過払い金と時効
過払い金があっても取り戻すことができなくなる場合が、2つあります。
1つ目は、時効によって消滅する場合です。
過払い金の返還請求権は、最後の取引日から10年経つと、時効によって貸金業者等の支払義務がなくなるのが原則です。
たとえば、平成10年1月5日から借り始めて平成19年3月31日に完済し、それ以降取引がない場合は、平成29年4月1日になると、時効によって過払い金が消滅する結果取り戻すことができなくなります。
2 途中で完済したことがある場合は、より時効にかかりやすくなる
途中で完済して再度借入を再開している場合には、注意が必要です。
途中で完済している場合は、途中で完済するまでと借入を再開した後とを別々の取引とみるか、最初から最後まで一続きの取引とみるか争いが生じることが少なくありません。
一続きの取引とみる場合は、時効の計算は、最後に完済した日を基準に10年と考えますが、別々の取引とみる場合は、途中で完済したときから10年たつと、途中で完済するまでの分は時効によって消滅すると考えられています。
たとえば、平成10年1月5日から借り始めて平成19年3月31日に一旦完済し、平成20年4月1日から借入を再開して平成25年3月31日に完済して、それ以降取引がない場合を考えます。
この場合、平成10年1月5日から平成25年3月31日まで一続きの取引とみることができれば、平成35年3月31日まで全ての取引にかかる過払い金が時効によって消滅しないことになります。
しかし、平成10年1月5日から平成19年3月31日までの取引と、平成20年4月1日から平成25年3月31日までの取引が別々とみられると、平成19年3月31日までの取引にかかる過払い金は、平成29年4月1日になると時効によって取り戻すことができなくなります。
平成20年4月1日から平成25年3月31日までの取引だけでは、過払い金は生じないことも多いので、結局全く過払い金を取り戻すことができなくなることになりかねません。
3 令和2年4月1日の民法改正で5年で時効にかかる可能性もある
令和2年4月1日、時効を定める民法が改正され、権利を行使できることを知った時から5年間行使したいときは、時効で権利が消滅するという規定ができました(民法166条1項1号)。
この規定は、令和2年4月1日以前に発生した過払い金には適用されませんが、令和2年4月1日以降に完済した過払い金は、5年で時効にかかって返してもらえなくなる可能性もありますので、それを踏まえた対応が求められます。
4 過払い金の時効を止めるにも早めのご相談を
このような時効の進行を止めるためには、早期にご相談いただき、弁護士が貸金業者に通知を出したり、訴訟を提起する必要があります。
訴訟を提起する場合は、名古屋市にお住まいの方であれば、過払い金の額に応じて名古屋地方裁判所又は名古屋簡易裁判所に提起するのが原則です。
5 過払い金と貸金業者の倒産
過払い金があるのに取り戻すことができなくなる2つ目のパターンは、貸金業者等が実質的に倒産した場合です。
こちらは、法的には請求権があるのですが、貸金業者等に資力がないため、回収しようがないということになります。
裁判所を通じて貸金業者の預金を差し押さえたり、貸金業者の店舗に現金をもらいに行ったりすることが考えられますが、いずれも手続きが複雑で費用もかかるので、ほとんど回収できなければ、費用倒れになってしまいます。
過去にも武富士、クラヴィス、アエルなど有名な貸金業者も倒産して、過払い金があってもほんの数パーセントしか回収できなかったり、請求が遅れて全く回収できないケースが数多くあります。
このような回収できない事態を避けるためには、過払い金の返還請求を始める前に相手の貸金業者等の経営状態に関して情報収集をしておくことと、貸金業者等が倒産する前に早めにご請求されることをお勧めします。